分子量と経皮吸収の話
ココナッツオイルを検索すると、スキンケアに使う人も多いようで
アマゾンのスキンケア部門の上位にもココナッツオイルが食い込んでいます。
ココナッツオイルの成分のほとんどは
ラウリン酸C12H24O2、ミリスチン酸C14H28O2、パルミチン酸C16H32O2。
どれも分子量200台です。
ここら辺のことは完全に解明されたわけではないようですが
皮膚のバリアは分子量500以下のものを通すといわれています。
(パブメドのこちらに文献のアブストラクトがあります)
この文献を元にして、分子量という点だけで皮膚への浸透を考えれば
ココナッツオイルは浸透されやすい油ということができるかと思います。
(ココナッツオイルの中の“遊離脂肪酸”の状態にあるカプリル酸とカプリン酸は
肌刺激が強いということを聞いたことがあります。
ここら辺は詳しくないのですが、遊離脂肪酸の状態にあるカプリル酸とカプリン酸を
除去しているココナッツオイルとそうでないものがあるそうです。
お肌の弱い方は注意なさってください。)
私がよく使うオイルの一つに「ファーナス油」があります。
これはアブラヤシの仁とココヤシの実から
飽和脂肪酸のカプリル酸とカプリン酸のみを分離抽出して作られたオイルです。
カプリル酸C8H16O2、カプリン酸C10H20O2
どちらも分子量100台ですから、速やかに浸透し、皮膚の深部に至ると
考えることができます。
ちなみに遊離脂肪酸の量を示す酸価は0.42
(オイルの酸化度合いを示すものです。
オイルに含まれる遊離脂肪酸の量を中和するために必要な水酸化カリウム量)
分子量500というのは皮膚が健康で、バリア機能が正常に働いている場合であって、
何らかの異常があって皮膚のバリア機能が壊れていれば、
それ以上の分子量であっても、通過してしまうことになります。
最初の頃は聞いていた塗り薬などが、状態がよくなるにつれ、
効かなくなってきたという話を聞くことがありますが、
これは薬剤投与によって、穴が広がっていた皮膚のバリア機能が回復し、
当初は通過していた薬剤の経皮吸収が妨げられるようになるためとも
考えられると聞いたことがあります。
分子量のみでここまで書いてきましたが、
経皮吸収のしやすさの条件はこれ以外にもあります。
・脂溶性が適度に高いこと
・融点が低いこと
皮膚は皮脂に覆われていますから、皮脂との親和性がなければ浸透していきません。
また、常温でコッチコチの固体であれば、やはりこれも浸透していけません。
つまり、肌から何らかの成分が吸収されるには、分子量が小さく(500ダルトン以下)、
油分になじみやすく、溶けやすい物ということになります。
いろいろと女性の歓心をくすぐりそうなキャッチフレーズで
いろいろなケアアイテムが販売されていますが、
こうした基本的なことを踏まえておけば、
あまりに怪しい物には引っかかりにくくなるかもしれません。
タグ:経皮吸収、分子量