風邪を治すのは身体です
勤めていた大学病院では、まだ当時は風邪をひいたと来られる方もいました。
何時間も待って、数分の診察。
治療や診断の難しい方がいっぱいなので、
ドクターが何人も外来に出てがんばっても、
多くの方はどうしてもそうなってしまいます。
患者さんにはとても苦痛なことです。
そして、たまに耳にしたのがこんな一言。
「風邪薬飲んで寝てろって言われた。抗生物質だせってんだよ。」
今は巷の<風邪>についての理解ってどうなっているんでしょうか。
最近、流されている<貧血>の薬のCMや風邪薬のCMの内容を見ていると
あまり変わっていないかもしれないなと感じます。
最初から結論を言うと、
あくまでも医学的な風邪=「感冒」の場合ですが、
風邪を治すのはご本人の身体です。
風邪を治す、風邪に効く薬はありません。
こんな辺鄙なブログに書いても、信用度はゼロかもしれませんが本当です。
「感冒」はウイルスによって引き起こされるため、
細菌に効く抗生物質が効くはずがありません。
逆に言えば、抗生物質が効いたなら
それは<厳密な意味での風邪ではありません>
やたらめったら抗生剤を使っても、
効かない薬に患者さんがお金を出すこと、
そのことに保険が使われること、
効きもしない薬を代謝するために、患者さんの腎臓と肝臓に負担がかかること、
将来的には薬剤耐性菌を生む土壌にもなりかねない
という4つの不利益があります。
考えられる選択は抗ウイルス薬ですが、ウィルスの特定は難しく、
仮に特定がなされたとしても、効く薬はありません。
現在開発されている抗ウイルス薬は
ヘルペスやサイトメガロウイルス、インフルエンザウイルすなど、
ごく一部のウイルスに対するものでしかありません。
私の住む地方では、最近、日較差が大きいせいなのか
風邪ひきさんらしい方をちょくちょく見かけます。
風邪に似た、重大な病気もありますから気は抜けないのですが、
もしも体調を崩して、風邪と診断されたら、
休養、休息が最も大切です。
風邪薬は症状を抑え、苦痛を緩和するものであって、
風邪を治すことはできません。
抗生物質は風邪には効きません。
細菌性の咽頭炎などを
患者さんにわかりやすく<風邪>と表現するドクターもいるためか、
ネットでは、風邪には細菌性のものがあるとの主張もありますが、
まとめサイトや知恵袋的なものばかりに頼るのでなく、
専門家が関わっているサイトも見てみるとよいと思います。