ネットの向こう側には<人>がいます

町内会で一緒に仕事をしているAさんから朝早く電話がありました。

Aさんのご家族は先月から入院されています。
原疾患と入院に至るあらかたのプロセスは聞いていました。

ご家族は○○の好きな方ですが、
Aさんが今出ている症状をネット検索したところ、
今ある症状には「○○はとてもいけない」と書いてあり、
すっかり驚いてしまって、どうしたらいいんだろうという話でした。

原疾患、治療の副作用、治療における行動制限など、
なかなかきつい状況にあるご家族の気持ちを支えるという意味もあって
はっきりと口には出しませんでしたが、Aさんは○○をご家族に
あげていたようでした。

ネットで「○○はよくない」というのを見たものの、
食事制限はかかっていないので、ドクターやナースに聞くこともできず、
かといって、本人の大好きなものを制限するのは可哀想だし、
ということで、相談されてきたのでした。

おそらくは、それに加えて、
ご家族の身体によくない物を与えてきてしまったのかもしれないという
罪悪感に苦しまれてもいたのでしょう。

質問の内容は医療従事者にとってはよく聞く類いのものでした。

Aさんがネットで見たという内容をあらかた聞いた上で、
・その症状に○○が悪いといわれがちな根拠
・その症状の原因と考えられることと投薬について、
・投薬と○○の関係
・(患者さんのデーターはわからないまでも、)
医療者が患者さんの状態をどう考えていると推測されるか、
その中で、その症状がどのような意味や位置づけを持つものであるか、
・ネットを見て不安感をもってしまった状況ではあるけれど、
どうすればご家族もご本人も気持ちの上で安心して○○を摂取できるのか
を順繰りに説明しました。

日頃から、疾患について良質な情報を得ている方ではあったので理解が早く、
不安感のない形で○○をご家族に勧めることもできるということで
一件落着。

それから、Aさんが話したことの書かれてありそうなサイトを検索しました。
私の見たサイトがAさんが見たのと同一ではないと思いますが
検索の上位にあるサイトを見て、少々驚きました。

専門サイト風を装っているけれど、プロフィールも何もありません。
すべてを読んだわけではありませんが、
電話で聞いた内容についての根拠になるものはあまりにお粗末。
症状そのものについての焦点の当てかたも有機的なものではありません。
少なくとも専門家ではなく、
その症状に苦しんだご本人でもないようにお見受けしました。

そのサイトを構築された方は、自分の書いた言葉と内容が
ただでさえ病気やそのための治療、制限などで苦しんでいるご本人やご家族に
不安感や罪悪感を与えるかもしれないことを考えたことがあるのでしょうか。

テレビに出ているようなドクターでさえ、
根拠のない情報を流しているのはずいぶん以前から見聞きしてきましたし、
一方では素人や患者さんでも良質な情報を得て、
それを元に専門家顔負けのサイトを構築されている方もおられます。

ですから、専門家でもないのに健康情報を流すなというのも不適切と思いますが、
せめて、出典を明らかにして根拠を出して説明するとか、
ハンドルネームであってもプロフィールを書いて、
説明責任を取ろうとする態度は最低限必要なのではないかと思います。

ネットの向こう側に、感情を持った、生きて、暮らしている人がいるということ、
生命や健康に関わることでマイナスの情報を
やむなく提供しなければならないのだとしたら、
そのフォローも考えた上で発信する必要があると思うのは
考えすぎでしょうか。

私自身、複数のサイトを持っていて、
もっとも古いものは情報発信を始めてから12年になります。

日頃から、こと、健康や疾患についての発信は怖いと感じながらの
サイト、ブログの更新ではありましたが、
今一度、自身の発信スタイルを振り返って、改めるべきところは
改めないといけないなと思う出来事でした。